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2026.10.26

日本企業M&Aの流れ|海外企業が日本企業を買収する際の基本ステップと外為法の事前届出

日本企業のM&Aは、一般に「専門家の選定→企業価値評価→秘密保持契約と情報開示→意向表明・基本合意→デューデリジェンス→最終契約→クロージング→PMI(統合作業)」という流れで進みます。海外企業・海外投資家が日本企業を買収・出資する場合は、これに加えて外為法(外国為替及び外国貿易法)に基づく事前届出や事後報告が必要になることがあります。本記事では、中小企業庁「中小M&Aガイドライン(第3版)」と財務省・日本銀行の公表資料をもとに、基本的な流れと実務上のポイントを整理します。

1. 日本企業M&Aの基本的な流れ

  1. 仲介者・FA(ファイナンシャル・アドバイザー)の選定:買い手・売り手それぞれが専門家と契約します。ガイドライン第3版は、手数料と提供業務の内容を契約前に確認することを重視しています。

  2. バリュエーション(企業価値評価):純資産法、類似会社比較法など複数の手法で対象企業・事業の価値を評価します。

  3. ティーザー(ノンネーム・シート)とNDA:社名を伏せた概要資料で関心を確認し、詳しい情報を受け取る前に秘密保持契約(NDA)を締結します。

  4. 企業概要書(IM)の検討:NDA締結後、実名や事業・財務の情報が記載された企業概要書が開示されます。

  5. 意向表明書の提出:買い手が希望条件を示す書面で、基本的には法的拘束力を持たないことが多いとされています。

  6. 基本合意(LOI/MOU):スキーム(株式譲渡・事業譲渡など)、予定価格、役員・従業員の処遇、スケジュールなどの主要事項を確認します。基本的に法的拘束力はありませんが、独占交渉権や秘密保持義務には拘束力を持たせるのが通常です。

  7. デューデリジェンス(DD):財務・法務・ビジネス・税務・人事労務などを調査し、譲渡価格や最終契約の表明保証・補償の調整に反映します。

  8. 最終契約の締結:中小M&Aの実務では株式譲渡または事業譲渡が選ばれることが多いとされています。

  9. クロージングとPMI:株式・資産の譲渡と対価の支払いを行い、その後一定期間で経営統合を進めます。中小企業庁は2022年3月に「中小PMIガイドライン」も公表しています。

2. 海外企業・海外投資家が注意すべき外為法の手続

  • 「外国投資家」の範囲:非居住者である個人、外国法令に基づき設立された法人のほか、これらに議決権の50%以上を保有されている日本の会社なども含まれます。

  • 事前届出が必要となる主な場合:国の安全等の観点から指定された業種(指定業種)を営む日本企業への投資で、上場会社では株式・議決権の1%以上の取得、非上場会社では株式・持分の取得などが対象です。役員就任への同意、事業の譲受け、1年超の一定の貸付なども対象となり得ます。指定業種に該当するかどうかは、定款の事業目的だけでなく実際の事業内容(子会社を含む)で判断されます。

  • 届出の時期と待機期間:事前届出は投資実行予定日前6か月以内に日本銀行経由で財務大臣・事業所管大臣に行います。受理日から30日を経過するまでは投資を実行できず(審査の結果により短縮される場合や、延長される場合があります)、スケジュールに組み込むことが必要です。

  • 事前届出免除制度と事後報告:経営に関与しないなどの基準を守る投資は、投資家の属性や業種に応じて事前届出が免除される場合があります。指定業種以外への投資は事後報告のみが求められ、原則として実行後45日以内に提出します。

  • 制度改正の動き:財務省の資料によると、外為法の一部を改正する法律が2026年6月5日に公布されており、投資審査制度の見直しが予定されています。最新の運用は財務省・日本銀行の公表資料で確認してください。

財務省は、上場会社ごとの事前届出の該当性リストを公表しているほか、年末年始や株主総会の集中時期の前は届出が増えるため、余裕を持った日程で手続を進めるよう呼びかけています。

3. 日本企業の側から見たポイント

  • 事業承継を目的としたM&Aが増えており、海外の戦略投資家やファンドは、後継者問題を抱える中堅・中小企業にとって選択肢の一つになっています(関連記事:日本のM&A動向|1〜9月は3,883件で過去最多)。

  • 海外の買い手との交渉では、意思決定のスケジュール、デューデリジェンスの範囲、従業員・取引先への説明の進め方について、早い段階で認識を合わせることが重要です。

  • 譲渡後の経営者保証の扱いなど、最終契約後にトラブルになりやすい事項について、ガイドライン第3版は事前の確認と契約への明記を求めています。

FinGroupとThe3%について

FinGroupは東京を拠点に、主に金融機関向けにIR・PR・FA(ファイナンシャル・アドバイザリー)サービスを提供し、海外企業の日本進出や日本での資金調達、日本企業の海外展開や海外資本とのマッチングを支援しています(投資銀行事業)。会員ネットワークを通じて促成した資本は約22.1億米ドルにのぼります。グループのウェルスメディア The3% は、リサーチレポート、イベント、ランキング、コミュニティを通じてアジアの富裕層投資家と日本市場をつないでおり、会員数は約16,000名(無料会員・有料会員を含む)です。クロスボーダーM&Aや日本市場に関するリサーチレポートの全文は THE 3% CLUB 会員向けに提供しています。日本企業の買収・出資、日本企業の海外資本受け入れに関するご相談は、お問い合わせフォームよりご連絡ください。

出典

  • 中小企業庁「中小M&Aガイドライン(第3版)―第三者への円滑な事業引継ぎに向けて―」(2024年8月)、経済産業省「『中小M&Aガイドライン』を改訂しました」(2024年8月30日)

  • 中小企業庁「中小PMIガイドライン」(2022年3月)

  • 財務省「対内直接投資審査制度について」、同「外為法・投資審査制度」(2026年6月時点の概要)

  • 日本銀行「外為法Q&A(対内直接投資・特定取得編)」

  • 外国為替及び外国貿易法 第26条〜第28条(e-Gov法令検索)

アイキャッチ写真:Blogtrepreneur / Wikimedia Commons、CC BY 2.0(トリミング・文字入れ加工)。

本記事は一般的な制度・手続の解説であり、個別の取引については弁護士、税理士等の専門家にご確認ください。

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