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2026.11.01
TOB(公開買付け)とは?30%ルールへの改正と手続きの流れ・期間をわかりやすく解説|海外企業が知るべき外為法のポイント

TOB(Take-Over Bid、公開買付け)とは、上場会社の株式などを、買付期間・価格・株数をあらかじめ公告したうえで、取引所の市場外で不特定多数の株主から買い付ける手続きです。日本では2026年5月1日施行の改正金融商品取引法により、いわゆる「3分の1ルール」が「30%ルール」に引き下げられ、市場内取引も対象になりました。EDINETの開示書類を集計した開示ワイヤーによると、第三者によるTOBの届出は2025年に136件と過去最多となり、2026年も10月までに78件(買付代金予定額の合計約7兆5,226億円)が提出されています。本稿では、TOBの基本、改正後のルール、手続きの流れ、海外企業が注意すべきポイントを整理します。
1. TOB(公開買付け)の基本
目的:会社の支配権に重大な影響を与える株式取得について、事前の情報開示、株主の熟慮期間、株主の平等な取扱いを確保するための制度です(金融庁、金融法務事情 2025年11月25日号)。
主な用途:同業他社や投資ファンドによる買収、親会社による上場子会社の完全子会社化、経営陣が参加する買収(MBO)、発行会社自身による自社株TOBなどに使われます。
市場の状況:TOB件数は2024年に100件、2025年に136件と増加し、2026年は上期で55件と前年同期を下回ったものの、過去2番目の高水準で推移しています(M&A Online)。開示ワイヤーの集計では、2026年の第三者TOBのプレミアム(公表前営業日終値比)の中央値は28.6%です。
2. どんな場合にTOBが義務になるか(2026年5月改正後)
2-1. 30%ルール
買付け後の株券等所有割合が30%を超える場合は、市場内・市場外を問わず、原則としてTOBによらなければなりません(金融商品取引法27条の2第1項1号、商事法務No.2414)。
改正前は「3分の1」が基準で、市場内取引(立会内)は対象外でした。改正により、市場で買い進めて30%を超えることも原則としてできなくなりました(金融庁)。
既に30%超を保有する者が、所有割合の増加が0.5%未満の「僅少買付け」を行う場合などは適用除外です(金融庁パブリックコメント結果、2025年7月4日)。
2-2. 5%ルール
市場外で多数の者(60日間で10名超)から買い付け、所有割合が5%超・30%以下となる場合もTOBが必要です(金融商品取引法27条の2第1項2号、金融法務事情)。
3. TOB手続きの流れ
①事前準備:デューデリジェンス、対象会社や大株主との協議、買付価格の算定、資金証明の準備、必要な許認可(独占禁止法、外為法など)の確認を行います。
②公開買付開始公告・届出書の提出:買付期間・価格・株数などを公告し、同日に公開買付届出書を提出します。届出書はEDINETで公開されます(金融商品取引法27条の3)。
③買付期間:公告日から起算して20営業日以上60営業日以内で定めます。原則として期間の短縮はできず、延長は通算60営業日の範囲で認められます(金融商品取引法施行令8条、商事法務No.2417)。
④対象会社の意見表明:対象会社は公告日から10営業日以内に意見表明報告書を提出し、賛同・反対などの意見を示します。買付期間が30営業日未満の場合は、30営業日への延長を請求できます(金融商品取引法27条の10)。
⑤結果の公表と決済:期間終了後に結果を公告・公表し、公開買付報告書を提出して決済します。買付け後の所有割合が3分の2以上となる場合は、応募された株式を全部買い付ける義務があります。
⑥非公開化の手続き:完全子会社化を目指す場合、TOB後に株式等売渡請求(議決権90%以上が前提)や株式併合(株主総会の特別決議)によるスクイーズアウトを行うのが一般的です。
4. 改正で柔軟になった点
公開買付期間中に対象会社が配当を行う場合などに、買付価格の引下げが可能になりました(金融庁)。
撤回事由が拡充され、買付期間・撤回・全部勧誘義務の規制について、個別事案ごとに当局の承認を得て免除を受けられる仕組みが設けられました(同)。
公開買付届出書の「買付け等の目的」欄の記載事項が明確化されています(同)。
海外投資家・日本進出企業にとってのポイント
日本の上場会社の株式を段階的に買い増す場合、30%超の取得は市場内でも原則TOBが必要になりました。資本業務提携や出資比率の計画は、改正後のルールを前提に組み立てる必要があります。
外国投資家は、外為法上、上場会社の株式を1%以上取得する場合などで対象会社が指定業種を営むときは、原則として事前届出が必要です(一定の基準を守る資産運用目的の投資には事前届出免除制度もあります)。審査期間を買付スケジュールに織り込むことが重要です(財務省)。
TOBでは、届出書・公告・プレスリリースなど日本語での開示と、対象会社の株主や取引先への丁寧な説明が求められます。法務・会計・財務の専門家と早い段階から連携することが望まれます。
FinGroupは、日本進出、日本での資金調達、クロスボーダーM&Aに取り組む企業・金融機関向けにIR・PR・FAサービスを提供しています。詳しくは投資銀行事業および金融メディアThe 3%をご覧いただくか、お問い合わせフォームよりご連絡ください。M&A全体の進め方は日本企業M&Aの流れ|海外企業が日本企業を買収する際の基本ステップと外為法の事前届出、上場会社への出資手法は第三者割当増資とは?もご参照ください。
出典
金融庁「令和6年金融商品取引法等改正に係る政令・内閣府令案等に関するパブリックコメントの結果等について」(2025年7月4日) https://www.fsa.go.jp/news/r7/shouken/20250704/20250704.html
金融法務事情 No.2270「公開買付制度・大量保有報告制度の見直しに係る金融商品取引法およびその関係政府令等の改正等の解説」(金融庁掲載) https://www.fsa.go.jp/frtc/kikou/2025/20251125_Houmujijou.pdf
商事法務 No.2414「公開買付制度」(金融庁掲載) https://www.fsa.go.jp/frtc/kikou/2025/20260215_syoujihoumu.pdf
商事法務 No.2417「公開買付制度」(金融庁掲載) https://www.fsa.go.jp/frtc/kikou/2025/20260315_syoujihoumu.pdf
開示ワイヤー「統計・ダッシュボード」 https://kaijiwire.jp/stats
M&A Online「2026年上期TOB、前年比13件減の55件も過去2番目の高水準」(2026年7月14日) https://maonline.jp/articles/hify2026_tob_summary_202607
財務省「対内直接投資審査制度について」 https://www.mof.go.jp/policy/international_policy/gaitame_kawase/fdi/index.htm
財務省「外為法・投資審査制度」 https://www.mof.go.jp/policy/international_policy/contents/pdf/index_5.pdf
画像:FinGroup オリジナル
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